奇特なブログ

「殊勝に値する行いや心掛け」を意味する、奇特な人になる為のブログです

とある飲食店での出来事 第一回 初めての来客

ここは、繁華街の片隅にある飲食店。

「なにや」という名前のその店は、
50代の男一人により、営業が行われている。
客の呼び名は「マスター」。

営業歴は、7年。
席数は、10席。

特に事業を拡大することもなく、
というより、特に取材されたりすることもないので、
拡大したくても、出来ないのだが。
常連客中心の経営スタイルで、細々と営業している。

そんな店にとある日、一人の男が現れた。


マスター「らっしゃい」
男「こんばんは」
マスター「(はじめて見る客だな)」

男は、席に腰掛ける。

マスター「何を食べる?名前の通り、何でも作るよ」
男「う~ん、魚を食べたいですね。ほっけかな。あと、ひらめの刺身ってあります?」
マスター「あぁ、あるよ」
男「ひらめ、あるんですか。凄いですね」
男「あと、飲み物は・・・焼酎をアセロラで割りたいんですけど、どうですか?」
マスター「あぁ、出来るよ」
男「・・・ホントに、何でも出来るんですね」

その後、マスターは調理に入った。
調理中、時々、男の方を見返す。

男は、30歳過ぎぐらいでメガネをかけていて、
誠実そうな見た目の極普通の男である。
服装は、若干個性的だが、
それでも、際立った特徴は無い。
スマホをいじったり、店の中を見回したりしている。

マスター「お客さん、うちは初めてだよな?」
男「はい、そうですね。何となく歩いていたら、入ってみたくなりまして」
マスター「家は、この近く?」
男「いや、かなり遠いですよ。ちょっと用事でこの辺に来たので、寄ってみただけですね」
マスター「なるほど。仕事は、どんな事してるの?」
男「インターネットあるじゃないですか。あれの、システムの開発とかやってますね」
マスター「俺、あんまりそれ知らないんだけど、具体的にはどういうの?」
男「ショッピングしたり、友人と交流したりするサイトとか。あと、オンラインのゲームとか。スマホでゲームやったりしないですかね?」
マスター「あぁ、俺はやらないんだけど、他のお客が結構やってるみたいだな。キャバ嬢とか若いお姉ちゃんが、好きみたいだ」
男「あぁ、主婦も結構やるみたいですし、満更でもないでしょうね」

男は、見た目の割りに、かなり饒舌だった。
あまり喋らない様に見えて、結構喋る。

マスター「なるほど、そういう仕事なのか。最近の調子はどうなの?」
男「ぼちぼちですね。当面は、特にどうという事は無いんですけど、5~10年以上先だと、ちょっとどうかなと思って、最近は先の事考えてることが多いですけど」
マスター「将来かぁ、あまり考えても仕方ないって、今なら思うよ」
男「でも、全く考えてないのも、危なくないですか」
マスター「まあね。ただ、俺も脱サラして妻と別れてってのは、若い頃には考えて無かったしなぁ」
男「あ、僕も脱サラして、今フリーでやってるんですよ。で、確かにどうなるか具体的には予想出来ないんですけど、ボンヤリとした未来なら予想できるかなと」
男「何かの本にも、書いてあったんですけどね」
マスター「あぁ、年金がどうとか消費税がどうとか、あと、業界がどうとかかな?」
男「あ、そういう感じです。ニュースとか追ったり、人を沢山見てると、見えてきません?」
マスター「確かに、商売柄、客は沢山見てきて色んな話とか聞いてきたけど、大体同じ様な話をしてて、そこから予想出来る部分ってのはあるよな」
男「そうですね」
マスター「で、どうなんだい、お前さんの業界は」
男「海外にやられっぱなしで、今後も勝てる余地なしって感じですね。今のままだと」
マスター「パソコンとかも関係あるんでしょ。確かに海外製品ばかりだな」
男「ですね。このスマホもそうですし、さっき話したショッピングとか友達と交流するサイトとかもそうですね。基本的に、海外に比べると商売が下手な印象ありますね」
男「僕は、物凄く不器用な人間なんですけど、そんな僕から見ても不器用だなぁと思う所多いですし」
マスター「どの辺が気になるの?」
男「上手くいっていないのに、やり方を変えない所とか。あと、上手くいった場合でも、そこで安心しちゃって、継続的に上手くいく様にしていないとか」
男「あと、あまりないケースですけど、非常に優れている会社が、今後は自分の会社のやり方がスタンダードになるとか思っていたりとか」
マスター「でも、上手くいってる会社に、他も追随していくんじゃないの」
男「勿論、そういう一面あると思いますよ。でも、スタンダードってのは言い過ぎ。教育無しで、それらが実践出来ない所まで変えることは出来ないと思いますけどね」
男「失礼ですけど、このお店みたく、特に事業を拡大しないなら、十分アリなんですけど、拡大しようとすると、そこで壁にぶち当たると思いますね」
マスター「いや、うちは特に事業拡大とか考えてないから、別に失礼じゃないけど」
マスター「あと、上手くいってないのに、やり方を変えないって所は、でも、そんなに商売って簡単じゃないでしょ」
男「ええ、そうですね。でも、簡単じゃないから、ちょっと試してみて検証してみるのが大切じゃないかなって思うんですけど」
男「自分の組織のスタイル的に噛み合わなければ、そこで止めて違うやり方をまた模索すれば良いんだし」
男「今日、僕がこの店に来たのもそうですけど、試食とか試着とか体験版とか、試すって考えが大事なんじゃないかと思いますよ」
マスター「まぁ、俺は一人だから、その話は良く分かるんだけど、従業員とかいると、中々難しいんだろう」
男「そうですね。」
マスター「結構、大変そうだなぁ。今後はどうするの?」
男「さっき、海外って言いましたけど、海外移住もちょっと視野に入ってますね。ただ、向こうはレベルが全然違うので、行ったとしてもしばらく先になるとは思いますけど」
男「でも、出来れば日本に住んでいたいですけどね。この国、結構僕は好きですし」
マスター「あぁ、確かに外国人のお客とかも、日本は綺麗で治安も良くて良い国って言う人多いな。まぁ、わざわざ来てて、住んでるんなら当たり前だろうけど」
男「ですね。あと、外国人がどうかは分からないですけど、芸人に限らずギャグのセンスが良い人が多い気も」
マスター「お笑い大国か。ハッハッハ」
男「素人でも、中々侮れないですし、ビジネスじゃなくて、そっちで勝負した方が良い気もしますね」

その後も色々と喋り、そして男が魚を食べ、帰るときが来た。

男「どうも、楽しかったです。マスター面白い人ですね。また来ます」
マスター「また、近くにきた時にでも、寄ってくれ」

頭の良い男だ。
マスターはそう思った。
一方で、頭の良さ次第では生きていけないことも知っているので、その辺が不安にも感じた。
今度来た時には、その辺の話をしてみようか。

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以前に、以下の小説を書いてたりしてまして、
結構、久しぶりになりましたね。
・・・去年が書いていないんですね。

 

kitoku-magic.hatenablog.com

 

kitoku-magic.hatenablog.com

 

あと、上記の元ネタは
深夜食堂(知ってる人は、気付いたかも)」と、
「占い(経験殆どないですけど、1対1で対峙って所が)」ですw
深夜食堂は、実家が良く観てまして、結構面白いんですよね。
映像作品も、最近見たくなっているので、どこかで観てみたい所ですけどね。
映像関係は、サイコパス(の続編)もあるし、中々時間が取れていないので、何とかしたい所ですけど。

あと、この小説も「不定期」なので、基本1話完結で、次回は全く未定です。
地味に、結構書くのキツイんで、しばらく先になる気がしますけど。

あとは、僕は以下にも書いた様に「群像劇」チックが好きなので、
この小説も、そうなると思いますね。
・・・オムニバス止まりにならない様にしたい所ですけど。

 

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